映画『ある男』のラストシーン、成長した長男・悠人の姿や、城戸が口にした「13歳」という言葉に、深い意味を感じた方も多いはず。
今回紹介するのは下記の「5つ」。ネタバレ含みます。
- 谷口大祐(=ある男X)の本当の性格は?
- 大祐の息子が「悲しくははないけどさびしい」と語った言葉の意味は?
- 詐欺師の小見浦(柄本明)が城戸弁護士を挑発したのはなぜか?
- 300歳まで生きる人間とは?
- ラストの結末の意味は?
考察①谷口大祐(=ある男X)の本当の性格は?
谷口大祐(窪田正孝)は文房具屋の登場シーンから、どこか影のある雰囲気を纏っていました。本当の自分を隠していたわけですが、どんな性格だったのか考察します。
父親の犯罪から目立たないように生きてきた谷口。自分の中に父親の姿を見るたびに嫌悪感で吐いてしまうほどの強烈なトラウマ。そういった過去を捨てて宮崎で「木」に携わる仕事につきます。人ではなく自然を相手に心静かに暮らしたかったのでしょう。
そんな谷口が安藤サクラ演じる谷口里枝との約3年間の家族生活を味わうことになります。子供と嬉しそうに接する父親の姿が見られました。それを近くで見ていた理枝の言葉からどんな性格だったのか伺えます。
城戸(妻夫木聡)の「いい絵ですね。少年がそのまま大きくなって書いたみたいな」という言葉に対して理枝が「夫はそのままの人だったんです」という台詞こそが、彼の本質を表しています。
自分自身すら受け入れられない危うさを抱えながらも、目の前の家族を純粋に愛した「少年のような人」だったのだと考えられます。
考察②ラストで「13歳」になった息子・悠人が受け入れた真実
物語の終盤、法要のシーンで長男・悠人は13歳(中学1年生)になっています。この「13歳」という設定には重要な意味があります。
「悲しくはないけど、さびしい」という言葉の意味 悠人は、大祐(X)の本当の子供ではありません。しかし、「悲しい(客観的な喪失)」ではなく「さびしい(主観的な欠落)」という言葉を選んだことに、二人の深い絆が現れています。
13歳という年齢の役割 13歳は、大人の複雑な事情や「戸籍の交換」という真実を理解し始める年齢です。彼は、自分の父が「偽物の谷口大祐」であったことを知った上で、それでも自分を愛してくれた「目の前の父」を肯定し、静かに受け入れました。この悠人の成長こそが、救いのない物語の中での唯一の「希望」として描かれています。
考察③詐欺師・小見浦が城戸を挑発したテクニック
城戸は2回小見浦に会いますが、馬鹿にしたような態度で挑発してきます。城戸にとって一番触れられたくない在日3世であることも見破られてしまいます。
何を言われても動じない城戸を見ていて小見浦は腹がたってきたのではないでしょうか。だから「私だけどうして戸籍を変えていないと思うんですか?バカですねー」などと言って怒らそうとして挑発したのです。
それも相手の心の深くを動揺されることで自分のペースに持ち込む一流の詐欺師のテクニックを駆使して。
もちろん、弁護士である城戸にそんな手口は通用しないものの、このあたりから、ある男Xが何者かを探るなかで、在日という本当の姿を隠す自分は何ものなのかということを自問しはじめることになります。
考察④300歳まで生きる人間とは?
「300歳まで生きる人間」との繋がり 詐欺師の小見浦(柄本明)が言った「300歳まで生きる人間(戸籍を渡り歩く人)」の話がここで回収されます。城戸は、自分を捨てて別の誰かになりたいという衝動を抑えきれず、物語の最後、ついに「ある男」の境界線を越えてしまったことを示唆しています。
考察⑤ラストの結末の意味は?
映画のラスト、バーのカウンターで城戸は、見知らぬ客に自分の家族構成を語ります。 「長男は13歳、下に娘がいます。実家は温泉……」
これは、城戸が調査対象だった「ある男X(大祐)」の人生をそのまま自分のこととして語っているシーンです。
これをどう考えたらよいでしょうか。城戸はまさに谷口大祐になり替わって話をしています。飲んだ勢いでそんな風に話をしているとも考えられます。しかし、考察④で述べたように、谷口大祐は戸籍上に存在しますが、実在の人間はいません。つまり、城戸がその気になればなりすましができるということです。
地位も家族もある城戸がそれらを捨てて谷口になるとは思えませんが、強い憧れのようなものは感じます。在日を背負った本人にしかわからないうっ積した感情が、目の前のまっさらな新しい人生に飛び込みたいという感情を抑えきれなくなっているとも考えられます。
以上が、映画「ある男」の疑問点とラストの考察でした。
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総合評価&あらすじ
「ある男」のあらすじ
弁護士の城戸(妻夫木聡)は、かつての依頼者である里枝(安藤サクラ)から、
亡くなった夫「大祐」(窪田正孝)の身元調査という奇妙な相談を受ける。里枝は離婚を経て、子供を連れて故郷に戻り、やがて出会う「大祐」と再婚。
そして新たに生まれた子供と4人で幸せな家庭を築いていたが、
ある日「大祐」が不慮の事故で命を落としてしまう。
悲しみに暮れる中、長年疎遠になっていた大祐の兄・恭一が法要に訪れ、
遺影を見ると 「これ、大祐じゃないです」と衝撃の事実を告げる。愛したはずの夫「大祐」は、名前もわからないまったくの別人だったのだ‥‥。
「大祐」として生きた「ある男」は、いったい誰だったのか。
何故別人として生きていたのか。「ある男」の正体を追い“真実”に近づくにつれて、
松竹サイトより
いつしか城戸の心に別人として生きた男への複雑な思いが生まれていく―――。
みんなの評判は?
「ある男」は日本アカデミー賞受賞など世間でも本当に話題になりましたね。絶賛する声がたくさん寄せられています。
映画『ある男』
— U-NEXT (@watch_UNEXT) April 28, 2023
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最多8部門で最優秀賞受賞✨
愛した夫は全くの別人だった…
別人になりすまして生きてきた
"ある男"の真相を追う
ヒューマン・ミステリー🔍#妻夫木聡 #安藤サクラ #窪田正孝#UNEXT
映画『ある男』はけっこうおもしろかった
— 傘成アキラ (@akira_kasanari) May 1, 2023
去年見た実写邦画だとトップじゃないかな(そもそも数見てないが)
ただ映画の文脈だと妻夫木の役は実際に在日韓国人の人がやった方が良かったかもしれない
それだと売れないかもだが
こんな人にオススメ
一言でいえば名作になりうる映画。映画のおもしろさがぎゅっと詰まっています。かといって決してファンタジーのような仮想の話ではなく、誰もが心の中にある「違う自分」になりたいという願望や日常への葛藤など、どこにでも誰にでもあっておかしくない今の世の中を映し出したお話です。
物語は終始、静かにそして重たく展開していきますが、決して嫌な感じではありません。むしろ、ところどころに人のやさしさや切なさというものがにじみ出てきます。
久々にいい映画みたな、そんな気持ちになる映画です。
愛したはずの夫は
— ゆうぞう (@estoes_unrobo) December 7, 2022
まったくの別人だった
平野啓一郎さんの原作を読み
気持ちが高ぶり観に行った
「ある男」
映画だから細かい部分は省略されてるものの原作の持つ雰囲気を壊さずに
力強い名作にしてくれしました。
12月上旬も終わろうとしてるけど
この作品が今のところ今年の邦画NO.1 pic.twitter.com/qRUuqNWntZ
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まとめ
「ある男」の疑問点やラストについて考察しました。映画『ある男』は、ラストに悠人が13歳になった姿を見せることで、「名前や過去が偽りであっても、共に過ごした時間は本物である」という答えを提示しました。
一方で、城戸がその「偽りの人生」に飲み込まれていく終わり方は、観る者に重い余韻を残します。皆さんは、あのバーのシーンの後、城戸はどうなったと思いますか?
- 谷口大祐(=ある男X)の本当の性格は?
- 大祐の息子が「悲しくははないけどさびしい」と語った言葉の意味は?
- 詐欺師の小見浦(柄本明)が城戸弁護士を挑発したのはなぜか?
- 300歳まで生きる人間とは?
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