【日曜美術館まとめ】だるまさんの魔法 絵本作家 かがくいひろしの世界展 Eテレ7月16日(再放送)

日曜美術館 かがくいひろし 映画・芸術・食
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「だるまさん」シリーズ。うちの子も大好きでした。シリーズ累計で900万以上だそうです。全国の保育施設には必ずある本。読んであげると興味を持たない子がいない本なのだそうです。

だ る ま さ ん が”というリズムを子供は大好きになるんですね。でも作者の「かがくいひろし」さんのことはあまり知られていないのではないでしょうか。

今回、全国巡回展に合わせて日曜美術館で残された膨大なアイデア帳や貴重な証言をもとに紹介されましたので、内容をまとめてみました。

この絵本の裏側に隠れた障がい児教育に取り組み、子供を笑顔にすることに捧げた生涯に胸が熱くなりました。

<関連展覧会>
日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家
かがくいひろしの世界

9月16日(土)まで(8月1日~4日は展示替え休館)
イルフ動画館(長野・岡谷市)
9月30日(土)~12月24日(日)
花巻市博物館(岩手・花巻市)
その後、高知、兵庫など全国を巡回予定

展覧会公式ホームページはこちら

かかくいひろしの世界展

かがくいひろしさん 人と作品

かがくいひろしさんは、昭和30年(1955)に東京で生まれました。

幼いことからものをつくることが大好き。彫刻家を目指し東京芸術大学を目指しますが3度の不合格。その後、21歳の時に東京学芸大学教育学部美術学科へ入学。

大学卒業と当時に特別支援学校。それはお姉さんが障害をもっておられ若い時になくなったというのも関係しているのではないかと言われています。

大学を卒業するときに、かがくいさんが友人に渡したメモ(大学の障害児教育授業より)↓

「効果があればやる、効果がなければやらないという考え方は合理主義と言えるでしょうが、これを人間の生き方にあてはめるのはまちがいです。この子どもたちは、ここでの毎日毎日が人生なのです。その人生をこの子どもたちなりに喜びをもって、充実していきていくことが大切なのです。わたしたちの努力の目標もそこにあります。」
ドイツ ビールフェルトのベテル施設 修道女

これから自分が歩む道についてしっかりと考えているのうかがえます。

かがくいひろし(20代)

26歳で教師になります。教師になると、訪問活動をしたり、楽器で音を感じたり、絵を描いたり、色々なことをいっしょに体験しました。教え子といっしょに絵本をつくったりもしました。

教え子が筆で絵を描いて、それにかがくいさんがセリフをつけました。その雲の家族の絵はハワイへ行ったり、フラダンスを踊ったり、世界中を仲良く飛び回ります。教え子といっしょに。。。

かがくいひろし(30代)

30代になると人形劇にとりくみます。

子供たちを喜ばせたいということで始められました。「つくしげきじょう」と名付けた舞台です。学校行事なので演じられ、脚本、演出、人形制作となんでもやりました。

ストーリーを追うことが難しいこともたちに「動き」と「音」でアプローチします。どうやったら子どもたちに伝わるかを常に考え、試行錯誤していったことと思います。

身近なものをおもしろおかしく擬人化する。それがのちに絵本に生かされていきます。

かがくいひろし(40代)

昼となく夜となく製作のインスピレーションがわいたそうです。40歳以降に書かれたアイデアノートは80冊以上になったそうです。

48歳で絵本コンクールに応募するも佳作どまり。

かがくいひろし(50代)

その後50歳で「おもちのきもち」でデビューをかざります。

おもちは、いつ自分が食べられてしまうかと心配していました。そして逃げ出します。身の回りのどんなものにも命が宿っているということを考えさせられます。

その後も、教師を続けながら絵本を発表していきます。

かがくいさんは絵本の編集者でも話題tなったそうです。新人というより出来上がった作家が現れたという感じだったそうです。子どもと誰よりも向き合ってきたのですから当然ですね。

編集者さんの声↓

(編集者さんの声)
・絵本が授業っぽい。なんか起こりそうというわくわく感を与えながら盛り上げていく。飽きない授業のよう。
・鯉とカエルと亀の話。血縁関係はなくても家族なんだというのが伝わってきます。

デビューして2年で人気作家に。そして、だるまさんシリーズへつながります。

だるまさんは、5年前くらいからアイディアノートに登場していました。

その後も子どもがどう喜んでくれるのか、自分が教師としてだるまさんになって「どてっ」とやると子どもが喜ぶなってことをひとつづつ試して、そして感じながら、だるまさんはできあがっていきます。

テレビ映像の子どもたち、だれもが嬉しそうで楽しそうで。本当に喜んでいるのが伝わってきます。

そして続編にかかります。2作目は「だるまさん」、3作目「だるまさん」と続いていきます。

3作目はスキンシップがテーマです。お母さんと本を読みながらスキンシップがはかられます。

(読者から編集部に寄せられた手紙)
・自閉症児の息子が書いた「どてっ」です(だるまさんの絵つき)
・初めて話した言葉が「だう(る)ま」でした
・弟が笑ってくれていつもうれしいです。ありがとうございます。ぺこっ

子どもに本物を届けたいといつも思っていたかがくさん。ただ、線で描くのではなく、一番こだわったのが「手触り」感覚そこに「ある」「いる」を大切にしていたんですね。

かがくいさんの遺品の中から大量の家族のスケッチがみつかりました。とくに一人娘の直子さんのスケッチでした。

直子さんの言葉 家でかがくいさんとお母さんが一晩中話をしているのを横で聞いていて「いいなあ」と思っていたそうです。スケッチは直子さんがわからないところで描いていたようです。

直子さんの長男は発達障害を持っておられるそうです。なかなか話を聞いてくれない息子が、だるまさんではじめて興味を持ってくれたことが、父の作品ということも重なって本当に嬉しかったと語っておられます。

教師を辞めてから

3作目のだるまさんが出たあとに、絵本に専念するために教師を辞めることになります。54歳のことです。

教師最後に日記には、こう綴られていました。

教師という仕事、楽しかったです。
仕事という意識、ほとんどなかったです。

9月13日。最初で最後の読み聞かせの会をします。

すでにすい臓がんに侵され痛いことも感じさせない笑顔で子どもたちに接します。

映像には手首にサポータがまかれているのが映し出されています。子どもたちに点滴のあとを見せないようにという配慮だったのだと思います。

そして、そのたった2週間後、2009年9月28日にすい臓がんのため54歳で急逝します。

自宅に残されたノートには亡くなる直前まで絵本のアイデアが書かれていました。

絵本作家としての活動は4年間で終わります。そして16冊の絵本を残しました。すべての本が今も版を重ねています。

編集者のもとには未完成の原稿がたくさん残っています。

「ぞうきんがけとぞうさんがけ」
・・・てててて、、、、たたたた、、、リズムのある音と動きのある絵。最後のぞうきんとぞうさんが物干し竿で乾かされている姿。

こんなお宝のような原稿が眠ったままなんですね。

かがくさんは編集者の方にこんなことを言っておられます

「僕はふだん、日の目を見ることがないぞうきんみたいなものを主人公にしたいんだよな」

ぞうさんとぞうきんという全く違った視点をどちらもなんの違和感も受け入れる、そんな大切なことが自然に伝わってきますね。

最後に、かがくいひろしさんのインタビュー音声です。

悲しい絵本とかって今の時代 子供の将来 環境問題も含めて辛そうじゃないですか
悲しい絵本とかあるんだけど 僕はふんばって
やっぱ笑顔になれる絵本というか 笑える絵本
それがいっときでもいいので 親子で
楽しくなれる絵本というか
笑える絵本をふんばって描いていきたいなって
僕 本当はすごいペシミストなので
悲観論者なんですよ でも そうはすまいと
それは絵本を描いていて すごく思ってて
やっぱふんばって
元気で笑顔でいてくださいって思います。

まとめ

子どもも大好きだった「だるまさん」シリーズ。こんなにたくさんの熱い思いが込められていたとは知りませんでした。

今も日本中で子供たちが笑顔でこの絵本を読んでいる。かがくいさんも喜んでおられるだろうなと思います。

<関連展覧会>
日本中の子どもたちを笑顔にした絵本作家
かがくいひろしの世界

9月16日(土)まで(8月1日~4日は展示替え休館)
イルフ動画館(長野・岡谷市)
9月30日(土)~12月24日(日)
花巻市博物館(岩手・花巻市)
その後、高知、兵庫など全国を巡回予定

展覧会公式ホームページはこちら

絵本雑誌のMoeでかがくいさんの特集をやっていますよ(だるまさんシールつき)

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